こころのアプリができるまで
- 3 日前
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当院では、患者さま向けのウェブアプリ「こころのアプリ」を公開しました。今回は、このアプリがどうして生まれたのか、どんな思いで作ったのか、少し長くなりますがお話しさせてください。
診察室で関われる時間には、限りがある
精神科の診察は、どんなに長くても数十分。でも患者さんの生活は24時間、365日続いています。
夜中に眠れなくて不安になったとき。電車の中でパニック発作が起きそうになったとき。朝、布団から出られなくて自分を責めてしまうとき。——そういう瞬間に、私はそばにいることができません。
「先生、次の診察までの間に何かできることはありますか?」
この質問を何度も受けるうちに、診察室の外でも患者さんを支えられる"何か"が必要だと強く感じるようになりました。
既存のアプリでは、しっくりこなかった
もちろん、世の中にはメンタルヘルスのアプリがたくさんあります。いくつも試して、患者さんにおすすめしてみました。
でも、英語ベースのものが多い。アカウント登録を求められる。広告が表示される。データがどこに送られるかわからない。——不安を抱えている患者さんに「このアプリを使ってみてください」と胸を張って言えるものが、なかなか見つかりませんでした。
「それなら、目の前にいるあなたのために、自分で作ろう。」
そう思ったのが、このアプリのはじまりです。
私はプログラマーではありません
正直に言えば、私にプログラミングの経験はほとんどありません。でも、「こういう場面で、こういうものがあれば助けになる」というイメージは、日々の診察の中で明確に持っていました。
そこで力を借りたのが、AIアシスタントのClaude(Anthropic社)です。私が臨床的なアイデアや要件を伝え、Claudeがそれをコードにしてくれる。そのやりとりを何百回と繰り返しながら、一つひとつのツールを形にしていきました。
「パニック発作のときに開いたら、最初に"大丈夫"と表示してほしい。」「呼吸ガイドは、過呼吸を防ぐために"鼻から吸って口からゆっくり吐く"にしてほしい。」「モニタリングで記録がゼロの日があっても、絶対に責めないでほしい。」
こうした"処方箋"のようなオーダーを出し続けて、アプリの形になっていきました。
一番こだわったのは「やさしさ」
技術的に動くだけでは足りません。大切にしたのは、つらい状態のときに開いても怖くないこと。自分を責めている人の気持ちを、さらに追い詰めないこと。
色づかい、文字の大きさ、ボタンの配置、一つひとつの言葉の選び方——すべて「いま不安な患者さんがこれを見たらどう感じるか」を基準に、何度も調整を重ねました。夜中に使う方も多いので、ナイトモードの色味にもこだわっています。
また、データはすべてご本人の端末内にのみ保存し、サーバーには一切送信しません。ログインも不要です。こころの記録という、とてもプライベートなものを安心して残していただけるよう、プライバシーには最も気を配りました。
「あなた」のためのアプリ
このアプリは、世界中の誰かに向けて作ったものではありません。
私のクリニックに来てくださって、いま目の前に座っているあなたのために作りました。
診察で話しきれなかったことを、心理教育のページで補いたい。お薬の説明を、家に帰ってからもう一度読み返せるようにしたい。睡眠日誌の記録を、次の診察で一緒に見ながら話したい。——そういう思いが一つひとつのツールになっています。
これからも、一緒に育てていきます
現在、セルフチェック、睡眠日誌、服薬チェッカー、パニック発作SOS、CBTワーク、心理教育など30以上のツールを提供しています。でも、これは完成形ではありません。
「こういう機能がほしい」「ここが使いにくい」——そんな声をいただきながら、これからも改善を続けていきます。診察のときに気軽に教えてくださいね。
どなたでも無料でお使いいただけます。よかったら、ホーム画面に追加してみてください。




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